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法律

2007年11月23日
アメリカの特許法改正
特許法の改正案がアメリカで差止めされている。その行方も気になるところだが、今日は法改正の方で情報があった。

アメリカのレーダー判事が東京医科歯科大学主催の講演会で話したところによると、先発明主義から先願主義への移行と欧州のグレースピリオド導入はバーター条件のようで、欧州の場合は法改正は1カ国でも反対したらダメなので多分決まらないだろう。すると、先願主義の導入もなくなるかも知れない、というようなことを言っていた。

また、米国の3倍賠償の問題は最近の最高裁判例により解決できるので、ルールの改正は必要なく、法案から外されるだろうとのことだった。

アメリカでも何となくプロパテント政策を修正するような動きがある。

ただ、それに賛成なのがIT関係で、バイオ関係のバイオベンチャーや製薬企業は反対の意向を表明している。そもそもIT業界とバイオとでは特許1件の重みが違うので同じ法律で扱うのには無理があるように思われる。

また、判例法については、日本でも判例により実務が変わることはあるが、アメリカのようにしょっちゅう変化することは無い。

やはり、イギリスのような判例法中心のためだろうか?

それにしても、同じような体系のイギリスとアメリカでは特許の扱いがまるで違うと思う。イギリスの判決は非常に詳細な検討がなされており、まるで特許庁のような細かい無効理由まで詳細に判断している。

そして同じ特許に対する判決もアメリカとは全く異なる場合がある。

特許法のハーモナイズも重要だが、こうした裁判上の違いは文化の違いや法体系の違いもあるのでそう簡単にはハーモナイズできないように思われる。

特許だけでなく、訴訟制度も含めてハーモナイズしないと企業にとっては面倒である。とはいえ、世界特許裁判所ができることも考えにくいので、やはり、訴訟は各国で異なるのは止むを得ないのかも知れない。

私も外国判例のセミナーをしたことがあるが、各国の判例を調べるには法制度も知る必要があり非常に大変だった。

これを日常的にやっている国際的な弁護士は本当に大変だろうと思う。
弁理士にしても何十カ国も出願するとなると翻訳チェックも無理だし、法制度もそれぞれなので非常に大変なことになる。とはいえ、それに見合った報酬をもらえるなら別に問題は無いとも言えるが。



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firstrategy at 00:35|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)
2007年03月25日
代理出産の最高裁判決
タレント・向井亜紀(42)と元プロレスラーの高田延彦(44)夫妻が、代理出産で設けた双子の男児(3つ)の出生届の受理を求めた家事審判の許可抗告審で、最高裁は23日、東京都品川区に受理を命じた東京高裁の決定を破棄し、受理を認められないとする決定をした。

この判断は果たして妥当なのだろうか?

古田佑紀裁判長は「民法の解釈では、代理出産で生まれた子の母は出産した女性で、卵子を提供した女性ではない」と、生みの親が母親との判断を初めて示した。

だが、親子関係はDNA鑑定で決定するのが今や常識ではなかろうか?代理出産というものが考えられもしなかった明治時代に作られた民法の解釈による上記の破棄決定は時代錯誤な感は否めない。

民法を作った時代には、代理出産も対外受精も存在していなかった。その社会の枠組みの中で作られた法律を科学技術の発達した現代社会にそのまま適用するのはどうかと思う。

実際、第二小法廷は「代理出産は公知の事実で、(明治時代に制定された)民法の想定していない事態だ」と指摘している。法律に書いてないから認められないものであろうか?

もし、代理出産ということが隠され、将来DNA鑑定のみによって親子関係が決定される場合は、代理出産を言うことを自白しなければ、親子として認められるのではなかろうか?

さらに、「遺伝的なつながりのある子を持ちたいという真摯(しんし)な希望と、他の女性に出産を依頼することについての社会一般の倫理的感情を踏まえ、立法による速やかな対応が強く望まれる」とも述べている。

つまり、現行民法の解釈では、上記のようになるが、立法的に代理出産の場合の卵子の提供者を母とする、というような条文ができなければ母として認められない、というようにも聞こえる。

ここから先は立法の問題になるのだろう。しかし、現状は代理出産の卵子提供者を母として認めてもらいたい需要があまり多くなければ、立法的な解決がある程度需要が多くなるまで先送りされる可能性はある。

似たようなことは特許法にも無いわけではない。

特許法69条の解釈にしても、リサーチツールという概念の無い時代の染野説を今だに金科玉条のように持ち出すのが半分当たり前のようになっている。

こちらは、法律の問題というよりも、解釈がまだ明確になっていない点に問題がある。現状は最高裁の判断を待っている状態とも言える。

しかし、最高裁の判断は上述のように、現状の法律の枠組みの中でしか判断されないとすれば、古い解釈で判断されるおそれがある。

とすれば、弁理士としても、そうしたリスクを十分考慮してリサーチツールの問題にも対応する必要があるだろう。

科学技術の進歩ががどんどん速くなっている現代社会では、立法が現実に追いつかないことも十分予想されることから、米国のように判例法により弾力的に運用するような仕組みが必要なのかも知れない。

科学の世界の常識と法律解釈とのギャップを非常に強く感じた。こうしたことからも、理系出身や医者の弁護士、裁判官が増えることは重要と思われる。

firstrategy at 16:30|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)