2008年07月

2008年07月04日

山中伸弥教授のiPS細胞

山中伸弥教授(京都大学)のiPS細胞の講演が先日国際会議場であった。国際バイオエキスポ(EXPO)というセミナーだったが、広い会場が満員で、立ち見も多かった。

おそらく、1000人以上が聴講していたのではなかろうか?

iPSの話自体は私も以前に聞いていたので、特に目新しい話は無かったのだが、iPSの誘導のやり方が何通りかある、という話を聞くと、特許的にどうなのだろう?と思ってしまう。

特許は言うまでも無く、独占するためにあるのだが、そのためには、考えられるあらゆるバリエーションについて全てを含むようにクレームする必要がある。

そうすれば、水ももらさぬ特許明細書が書ける。

ところが、いくらでも代替技術が出てくるような技術の場合は、独占することは不可能に近い。

ウィスコンシン大学でも山中教授とは異なる遺伝子セットでiPSの誘導に成功しているし、京都大学では物質によってiPSを誘導する試みも進んでいる。

つまり、iPS細胞の誘導にはいくつものルートがあるというわけだ。

だとすれば、山中教授の発見した遺伝子セットの一部を置き換えて特許をすり抜けることも可能だろう。

これが遺伝子組換えのコーエン・ボイヤーのような特許を出願していたのであれば、別だが、エスケープ容易な特許しか出願していないとすると、非常に問題である。

また、ヒトの前にマウスで成功していて、そのままのやり方で成功していることから進歩性の問題もある。

iPSのような発明は広い特許で押さえ、一般に安く開放するのが望ましい。

だが、iPSの誘導が容易であることから、今後世界中のどこのラボでもiPSの誘導ができるようになり、研究が爆発的に進むだろう。

そうなれば、山中教授がノーベル賞を取れる可能性は高まると思われる。そういう意味では日本にとって喜ばしいことではあるが、特許で金儲けという考えはあまりうまく行かないのではないか?と思えてならない。
firstrategy at 18:23|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)知財 | 発明