2007年11月

2007年11月30日

知的財産研修会

特許戦略のセミナーをある官庁の研修会でやってきた。

これまでにやった特許・知財戦略セミナーのスライドを順番を入れ替え、さらに、その官庁の要望に沿うつもりで新しいスライドも追加し98枚にした。

医薬、食品、化粧品の特許に関する話題以外にも、特許オークションとかパテント・トロール(patent troll)問題についても触れた。農水省の知財戦略等についても少しだけ触れた。あらゆる話題を網羅しようとしたがある意味散漫な内容になり、それをたったの90分で説明したのでかなり駆け足になってしまった。もう少し、ストーリー性をしっかり持たすことが課題と思う。

最初は2時間以上のつもりで作成したのだが、実際には1時間30分だったので、時間的に少し足りなかった。その分は不要な部分をはしょって説明したのでちょうど3分くらい残して終了できた。

みなさん、3日間の研修の最後の講義というのに熱心にメモを取るなどされていたのでやってよかったと思う。

知財のセミナーの場合、やはり、聴衆の興味を知る必要がある。

明細書作成講座などの場合は最初から大体の筋書きが作れるが、知財戦略研修と言っても、初心者向けか、ベテラン向けか、大企業向けか、中小企業向けか、機械メーカーか電気メーカーか、あるいは、製薬企業か、など来るメンバーによって説明する内容が非常に変わってくる。

最近では医薬品特許の延命化のセミナーを実施したが、こちらはテーマを絞っただけにより高度な内容になった。

他には大学の教員向けの初心者向けセミナーをやったりもした。この場合は特許庁の初心者向けテキストにそって説明するくらいでよいので、非常に楽である。

気を使うのは製薬企業で10年以上知財部にいるような人を相手にするとかなり気を使う。しかし、それなりのやり方もわかっているので、今後もセミナーは続けて行こうと思っている。

私の場合、知財戦略ができることからあらゆる聴衆に対応可能である。

アグリビジネスから医薬、食品、化粧品業界などの化学業界、弁護士、公認会計士等の士業向け、公的研究機関向け等どこでも知財戦略は必要となる。

そして相手の立場に合わせて内容を修正しやすい。

これまではセミナー屋さんに頼まれたり、人づてに頼まれてやってきたが、もう10回以上やっているのでそろそろ自分で主催してやってみようかと思っている。

その場合の値段がちょっと考え物だが、通常のセミナーは1人5万円で募集しているので、それより少し安いくらいだろうか?

自分のノウハウを全て提供するセミナーを是非やってみたいものだ。そうすることでまた新たなノウハウが開発されるはずだからだ。知恵は吐き出さないと新しいものが出てこないので、一度何らかの形で吐き出したいと思っている。
firstrategy at 23:22|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)知財 | 特許

2007年11月23日

アメリカの特許法改正

特許法の改正案がアメリカで差止めされている。その行方も気になるところだが、今日は法改正の方で情報があった。

アメリカのレーダー判事が東京医科歯科大学主催の講演会で話したところによると、先発明主義から先願主義への移行と欧州のグレースピリオド導入はバーター条件のようで、欧州の場合は法改正は1カ国でも反対したらダメなので多分決まらないだろう。すると、先願主義の導入もなくなるかも知れない、というようなことを言っていた。

また、米国の3倍賠償の問題は最近の最高裁判例により解決できるので、ルールの改正は必要なく、法案から外されるだろうとのことだった。

アメリカでも何となくプロパテント政策を修正するような動きがある。

ただ、それに賛成なのがIT関係で、バイオ関係のバイオベンチャーや製薬企業は反対の意向を表明している。そもそもIT業界とバイオとでは特許1件の重みが違うので同じ法律で扱うのには無理があるように思われる。

また、判例法については、日本でも判例により実務が変わることはあるが、アメリカのようにしょっちゅう変化することは無い。

やはり、イギリスのような判例法中心のためだろうか?

それにしても、同じような体系のイギリスとアメリカでは特許の扱いがまるで違うと思う。イギリスの判決は非常に詳細な検討がなされており、まるで特許庁のような細かい無効理由まで詳細に判断している。

そして同じ特許に対する判決もアメリカとは全く異なる場合がある。

特許法のハーモナイズも重要だが、こうした裁判上の違いは文化の違いや法体系の違いもあるのでそう簡単にはハーモナイズできないように思われる。

特許だけでなく、訴訟制度も含めてハーモナイズしないと企業にとっては面倒である。とはいえ、世界特許裁判所ができることも考えにくいので、やはり、訴訟は各国で異なるのは止むを得ないのかも知れない。

私も外国判例のセミナーをしたことがあるが、各国の判例を調べるには法制度も知る必要があり非常に大変だった。

これを日常的にやっている国際的な弁護士は本当に大変だろうと思う。
弁理士にしても何十カ国も出願するとなると翻訳チェックも無理だし、法制度もそれぞれなので非常に大変なことになる。とはいえ、それに見合った報酬をもらえるなら別に問題は無いとも言えるが。



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firstrategy at 00:35|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)特許 | 法律

2007年11月08日

特許情報フェア

今日は特許情報フェアに行ってきた。これは毎年科学技術館で行われているものだが、特許情報解析ソフトや特許管理ソフト、特許戦略コンサルティング、パテントマップ、海外判例情報、特許事務所などの会社が出展して新製品を宣伝するものだ。参加者も以前よりもさらに増えているように感じた。

特許調査やパテントマップのソフトウエアは以前に行ったときよりも相当レベルアップしており、特許調査の中間段階の履歴が知財部員全員で見れるようなシステムなども開発されていた。

特許調査をした場合、パテントマップにまでしておかないと、単なる文献集めだけで終わってしまう。しかし、その履歴があれば、また同じような検索をする場合に、キーワードやIPC(国際特許分類)、Fターム等がわかるので、便利である。

特許情報フェアではセミナーもあり、米国の知財ビジネス事情や特許オークション、米国での契約交渉等の話が面白かった。これらのセッションは事前申し込みで満員でキャンセル待ちだったのだが、キャンセル待ちの列に並んでいたら比較的簡単に入れた。並んでみるものだ。今回はキャノンのインクリサイクルの最高裁判決については話題になっていなかった。単純な事件だったためか、あまり話題性が無いようだ。フジフィルムと似たようなケース等であれば話題になったかも知れないが。

私自身は米国での契約交渉や契約書チェックの経験から、契約交渉の話は非常に面白かった。知っていることも多かったが、事例や判例で話をされると理解が深まる感じだった。

また、日本と米国でのletter of intentの扱いについても、日本では信義誠実の原則から有効な契約とされることが多いのに対し、アメリカでは原則non-bindingとなる。これはアメリカでは契約の内容が明確でなければならないためだそうだ。

日本でも契約については確定性が求められるが、letter of intent程度の確定性でもよいらしい。日本の研究者は契約はできるだけあいまいな方がいい、とわかったような口をきくが、それでは通用しないことを知財部員が教育する必要があるだろう。

また、欧州特許庁のesp@cenetについては、pdfで全文をダウンロードできるようになったそうで、1ページずつ100ページ近い公報をダウンロードしなくて済むと思うと非常にありがたい。

日本も早く公報全文のpdfのダウンロードをしてもらえるといいのだが。


firstrategy at 23:01|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)特許 | 知財