2007年05月

2007年05月30日

拒絶査定

特許出願について審査請求をして、最初の拒絶理由通知が来た場合、請求項の補正をせずに意見書のみで対応することはよくある。

しかし、特許事務所が作成した意見書の内容が間違っていたりすると、一発で拒絶査定になることがある。

特に特許庁審査官の発明の認定が間違っている、と意見書で書いたときに、こちらの発明の認定が間違っていると救いようがない。

こうしたことを避けるにはやはり補正をしておいた方が無難ではないかと思われる。

補正にも実質的には権利範囲を狭めない減縮補正もある。そうした補正をして提出すれば最後の拒絶理由通知が来るケースもある。

ともあれ、拒絶査定が来た場合、基本的には審判請求には慎重になるのが通常の実務だろう。費用もかかるからだ。

事業に使うなど重要な特許であれば迷わずに拒絶査定不服審判を請求することもあるが、通常の場合はそこまで権利化にこだわらず、そのまま放置することが多い。

そういう意味では拒絶理由対応の際に何とか権利化できるよう減縮補正して特許査定を得るようにするのがよい。そのためには面接審査を有効活用して特許取得できるようにすべきだ。

最近では進歩性の判断が非常に厳しくなってきている。これは侵害訴訟で無効になる特許が多いためとも言われている。

なので、しっかり特許調査をしてできる限り有効な権利取得に努める必要がある。日本の公報だけでなく、今後は米国の特許も調査するくらいやることが必要かも知れない。

費用対効果も考えてやる必要はあるが、研究者は自分の分野だけなので、そこまでやるのがよいだろう。


2007年05月23日

知的財産本部とTLOの一本化

産学連携でリーダー的な大学(東京大学、東京工業大学、東京農工大学など)が、TLOと知的財産本部の一体化を進めるという。

従来、以前からある、TLOと新規に2003年に発足した知的財産本部とはしっくり行かず、TLOは以前から地道な努力をしていて、自分達がやってきたからうまく行っているという自負があり、知的財産本部はもはやTLOは不要、という見方をするなど軋轢が目立つ場面もあった。

また、知的財産本部は出願費用を抑えたいため、出願を絞る傾向にあるが、TLOとしては、商品としての特許を増やしたい、といった問題もあった。

しかし、知的財産本部事業が2007年度で終了することから、TLOと大学知的財産本部の関係に変化が見られそうな状況である。両者を同一の組織にすれば上述のような問題は解消する。

それに、ポスト知財本部事業があるかどうかも不明だし、あったにせよ、規模は現在の34校からは相当少なくなると予想されているため、知財本部が生き残りをかけてTLOと合体するという選択肢もありうる。

この場合、TLOを新設する大学は学内TLOを作る可能性があるが、現在外部にTLOを持っている大学はそこに委託する形になる可能性もある。

東大はTLOに1億7千万円を出資して過半数の株を保有した。東大TLOは新株予約権を多数持ち、超優良企業でもある。東大は出資金を寄付金でまなかったという。これは東大だからできたことで地方の大学や、新設の大学は難しいのではないか?運営費交付金を出資できる仕組み等がなければ一部の大学しかTLOに出資できないおそれもある。

文部科学省としては知財ポリシーの策定や特許管理システムの確立という知財本部の役目は整備事業終了とともに終わると見ているという。今後は知財の活用に力を入れる方向なので、共同研究、技術移転(ライセンス)の多い大学が支援されることになるようだ。一言で言えば、ライセンス収入の多い大学の方が有利になるだろう。

TLOの合併も含め、大学知的財産本部の今後が注目される。知財本部事業の支援を受けられなかった大学では、広域TLOに委託する大学も出てくると予想される。

今後の大学の知財戦略をどうするかは大学の経営戦略上も大きな問題だろう。東大TLOのようにうまく行っている大学は別として、大学における知財ブームが終焉し、知財を重視しない大学も出てくる可能性もある。

大学を重要なマーケットとしている弁理士事務所にとっては由々しき問題かも知れない。



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